注目による悪循環

概要

幼児の子育てや、特別支援の必要なこどもと接するときについてです。ハマりやすいワナについて説明します。

ワナにはこどもの問題行動に対して、おとなが大騒ぎすると悪循環にハマりやすいです。

すべての問題行動の原因ではないです。でも、かなりハマりやすいワナだと思います。

専門的には応用行動分析という心理学について説明します。

しっかりとした説明は、引用文献にゆずります。ここでは、簡単に。

結論は、「注目によって起きる問題行動は相手にしない」です。

ただし注意点もあります。

  • こどもを無視するのとは違います!!
  • 同時に子どもの肯定感を高めることも必要です!!
  • 基本は「子どもの困り感を解消する」です

応用行動分析の見方で考える

注目による悪循環をたち切るためには、注目をやめればいいです。応用行動分析という分野の考え方を利用します。

応用行動分析は心理学の1つです。
心理学ですが、心は扱いません。
扱うのは行動です。

「子どもが問題行動をしたときに、何が起こるか」を観察します。

 子どもが荒れる ➡ 大人が対応する

子どもは対応して欲しくて、荒れてしまうことがあります。そのため、対応するほど子供が荒れるようになってしまいます。

この場合、対応・注目をやめればうまくいくのです。

 子どもが荒れる ➡ 大人が対応しない

子どもは荒れてもいいことが起きません。
だから、荒れる回数が減ります。(杉山 2005, pp.105-6)

悪循環にハマりやすい理由

いったんおさまるから注意してしまう

注意するといったんおさまることも多いでしょう。
 注意する ➡ いったん荒れがおさまる

その結果、大人は注意するようになります。しかし、注意するから子どもが荒れる回数が増えていくということがあるのです。(杉山 2005, pp.113-4)

暴力・暴言などの強いやり方にハマってしまうことは、この「いったんおさまるから」で説明できます。

こどもの内に治してあげて

注目による悪循環を成人の方の福祉施設で見たことがあります。

ぜひ、子どものうちに治してあげてほしいとおもいます。子どもの可能性が広がります。

就労継続支援施設の利用者の方でした。作業に参加せず利用時間中ずっとうろうろしてました。

うろうろする前後を職員がずっと張り付いています。本来は作業し、工賃をもらい、社会参加を果たす施設です。

他の利用者はみな作業をしています。彼の前後には支援員がずっとついて回ります。

本来は作業の支援員です。

彼はすきを見て施設をちょっと壊します。壊れやすそうなところを狙って。そのたびに支援員が止めに入ります。

繰り返されるため彼がいるだけで場が緊張するのが分かります。

注目が原因と推測されました。ただ、これは壊されるので、無視するわけにはいかない事例です。

無視してはいけない場合の対処法についてはまたの機会に。

言いたかったことは、誰かが彼をもっと早く救い出してあげてほしかったということです。

注目のために一日中壊し続ける、あまりにもかわいそうでした。

注意点

  • 子どもが困っているときは対応が必要
  • 他の場面でつながりを作る必要がある
  • 罰を与えてよいと考えるのは危険
  • 無視してはいけない場合もある

しかし子どもが荒れているとき、「見てほしいだけだから無視」と単純に考えるとこれも問題があります。

注目が原因かどうかは確かめないといけません。無視して、荒れることが減っていくのかどうか確かめます。

専門的には荒れる回数を数えます。現場ではそこまではしないことも多いでしょう。しかし、検証する意識は必要です。

子どもは困っていて荒れるあることもよくあります。

この場合は解決すれば落ち着くことも多いです。
対応すれば子どもの大人に対する信頼が強くなります。

また、困っていることを分かりやすくまわりの人に伝えられるようにしてやることも必要です。

現場では、荒れる理由が困っているからなのか注目を集めたいからなのかわからないまま子どもと向き合う場面も多いです。

きぜんと、大人が子どもの目線に合わせ、ゆっくりと、ていねいに、わかりやすいかんたんな言葉で対応します。

大人が大騒ぎすると子どもの荒れをひどくすることがあるのに困り感に対応する場面では大人が落ち着くことが必要です。

子どもが困っているのに対応しないと、子どもが発信をあきらめます。子どもの無気力につながります。(波多野 2020)

逆にきちんと困り感に対応すると子どもの信頼感が高まります(スティーブン 2013)

信頼感を積み重ねることで言ったことを受け入れてもらえやすくなります。

悪い行動のみを無視するというのは難しいです。子どもに対する暖かい気持ちがなくなりやすいです。

その子ども自体は受け入れるのです。悪い行動をしている以外の場面では、つながりをたくさん作る必要があります。

さらに、罰を与えてよいと単純に考えることは危険です。

「子どもが悪いことをしたら罰を与える。そうすればしなくなる」

応用行動分析の視点から単純に考えると、このように考えてしまいがちです。

「子どもを叩いたり、暴言を浴びせたりしてもよい」

と考えるもとにもなります。児童虐待の根本精神になりやすいと思います。

今日では罰を用いたしつけには多くの問題があることが分かっています。(レイモンド 2006, pp.104)

無視してはいけない場合もあります。全員が無視できない、誰かに危害がおよぶ場合などです。

そういう意味では安易に適用してはいけない技なのですが、あまりにも頻繁に目にするので紹介しました。

ただ、安易に適用している事例も身の回りではよくみます。
たまたまハマればおさまります。

しかし、アセスメント(査定)がうまくいっていない場合も周りではよく見ます。
応用行動分析については、教育関係者はよく勉強してほしいと思います。

参考文献

  • 杉山尚子(2005)『行動分析学入門』、集英社新書
  • 波多野誼余夫(2020)『無気力の心理学』、中央公論新社
  • スティーブン・R・コヴィー(2013)『7つの習慣』、キングベアー出版
  • レイモンド・G・ミルテンバーガー (2006) 『行動変容法入門』、二瓶社

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